「クリスマスの悪夢」流行

「クランプス」という悪魔が今、米国で人気者になっているそうだ。クランプスとは、オーストリアの民間伝承に登場する、半分ヤギ、半分悪魔の姿をした怪物のことだ。クランプスはサンタクロースの起源と言われている、子供たちにプレゼントを配る聖ニコラウスとは対照的に、悪い子供たちを叩いたり、連れ去ったり、さらには地獄へ引きずり込んだりするそうだ。
米国でクランプスが突如脚光を浴びた理由については、アートディレクターのモンティ・ビーチャム氏が火付け役を自認しているという。ビーチャム氏がクランプスを知ったのは、あるコレクターからクランプスが描かれた19~20世紀の郵便はがきを見せてもらったことがきっかけだという。その後彼は、自身が発行するコミック誌でクランプスはがきを紹介し、2004年と2010年にはそれらを集めた本も出版した。
1冊目の本を出して間もなく、ビーチャム氏のところにカリフォルニア州のギャラリーから連絡が入り、クランプスはがきの展覧会をやりたいとの提案を受けたそうだ。展覧会は大成功で、以来クランプスを題材にした展覧会のキュレーションを任されるようになったそうだ。そのあたりからクランプスの人気は雪だるま式に高まっていったという。
クランプスのはがきが販売されるようになったのは、オーストリア政府が郵便はがきの生産管理を手放した1890年以降で、この商売は甥に繁盛したそうだ。それから第一次大戦までの間にドイツの企業が国内やオーストリアなどでクランプスのクリスマスはがきの販売を行った。子供向けのはがきには、恐ろしげなクランプスが子供たちを怖がらせたり、背中に担いだ籠に入れてさらったりしている絵が描かれている。1903~1904年頃には大人向けのはがきも登場し、女性をさらったり女性に求愛しているようなものが多かったという。
オーストリアやドイツの一部では、クランプスナハトにクランプスに扮して子どもたちを怖がらせる19世紀の風習が今も残っているそうだ。
現在米国で行われているクランプス関連の行事は、ほとんどが仮装してお酒を飲むといった大人を対象としたものだそうだ。こうした過ごし方は実は、子供とプレゼントを中心とした行事になる前の、古い時代の米国のクリスマスによく似ているという。
かつてはクリスマスと言えばにぎやかなお祭り騒ぎをする日で、いわばハロウィン、大晦日、マルディグラを混ぜ合わせたようなものだったそうだ。当時は仮装をした人たちが家々のドアを叩いて要求し、出さなければ騒ぐぞと脅すことがごく当たり前に行われていたという。現代の子供たちがハロウィンにやる「トリック・オア・トリート」はこの習慣から健全な部分だけをのこしたものとも言える。
クリスマスの形は時代と共に変化していくものであり、この先クランプスが一般の人々にも受け入れられるほど有名になるかもしれない。日本で流行る日も、そう遠くないのかも?